2025.10.18
指しゃぶりが歯並びに与える影響とは?歯並び以外にも悪影響がある?
お子さまの指しゃぶり。「一体いつまで続くの?」「歯並びは本当に大丈夫?」とご心配な方も多いはず。3歳過ぎても長く続く指しゃぶりは、出っ歯や開咬といった歯並びの乱れを大きく引き起こす原因となります。
実は、虫歯や歯周病のリスクをさらに高めたり、慢性的な口呼吸を誘発したり、滑舌の著しい悪化に繋がる可能性も。この記事では、指しゃぶりの様々なリスクと、無理なく自然に卒業へと導く方法を解説します。
指しゃぶりが歯並びに
与える悪影響

上顎前突
上顎前突とは、上の顎の骨や歯全体が下の顎より前に出ている状態です。骨格的な問題の他に、歯並びや噛み合わせに影響を与えることもあります。遺伝的な要因の他に、幼少期の癖が原因となることも少なくありません。
指しゃぶりを続けると、指を吸う力で頬の筋肉が内側に引っ張られます。その結果、上顎の成長が阻害され、変形してしまうことがあります。上顎のアーチがV字のように狭くなると、歯が並ぶためのスペースが足りなくなります。
上顎前突になると、見た目の問題だけでなく、次のような機能的な問題にもつながります。特に、呼吸や咀嚼といった、日常生活に欠かせない機能に影響が出ることがあります。常に口が少し開いた状態になり、口呼吸の原因になります。
出っ歯
「出っ歯」は上顎前突と似ていますが、特に上の前歯が前方に大きく傾いている状態を指します。
指しゃぶりをする時、多くのお子さまは指を上の前歯の裏側あたりに当てて吸います。この癖が続くと、歯には常に一定方向への力がかかり続けることになります。
具体的には、歯に次のような力が作用します。
- 上の前歯指によって、常に前へ前へと押し出される力がかかります。
- 下の前歯指や指の付け根によって、下へ、そして内側へと押さえつけられます。
この状態が長く続くと、上の前歯は外側に向かって傾斜します。同時に下の前歯は内側に倒れ込み、上下の前歯の段差が大きくなっていきます。これが、いわゆる「出っ歯」と呼ばれる歯並びが作られる仕組みです。
開咬
開咬とは、奥歯をしっかり噛んでも上下の前歯が噛み合わず、隙間が空く状態です。指しゃぶりの癖があると、常に上下の前歯の間に指という「障害物」が挟まります。開咬になると、日常生活において次のような深刻な問題が起こりやすくなります。
前歯で食べ物をうまく噛み切れず、麺類などをすすることが難しくなります。歯の隙間から空気が漏れてしまい、「サ行」や「タ行」などが不明瞭になることがあります。
噛む力が奥歯に集中するため、将来的に奥歯がすり減ったり、割れたりする原因になります。噛み合わせのバランスが悪くなり、顎の関節に負担がかかりやすくなります。開咬は、見た目以上に機能的な問題が大きい不正咬合の一つです。
指しゃぶりはいつまでに
辞めさせるべき?

お子さまの指しゃぶりについて悩む保護者の方は多いでしょう。特に「いつまでにやめさせれば歯並びに影響しないの?」というご質問はよくあります。
一つの目安として、3歳頃までは成長過程と捉え、温かく見守ってあげてよいでしょう。この時期の指しゃぶりは、お子さまの心を安定させる大切な役割があります。
しかし、言葉でのコミュニケーションが豊かになる4歳を過ぎても続く場合は注意が必要です。この時期を境に、指しゃぶりが歯並びや顎の成長に与える影響が固定化しやすくなるため、4歳を目安に少しずつ卒業できるよう促していくことが望ましいと言えます。
もし3歳以下であっても、すでに出っ歯の傾向が見られるなどご心配な点があれば、年齢にかかわらず一度ご相談ください。
指しゃぶりを辞めさせる方法

手を使った遊びをする
手持ち無沙汰な時などに、無意識に指を口に運んでしまうお子さまは多いです。指を口ではなく、創造的な活動に使う楽しさを教えることが目的です。
手や指は「第二の脳」とも呼ばれ、指先を動かすことは脳の発達にも良い影響を与えます。お子さまが楽しめる遊びを一緒に見つけてみてください。
粘土やスライム遊び、お絵描きや塗り絵、ブロックや積み木、折り紙やシール貼りがおすすめです。遊びのポイントは、保護者の方も一緒に楽しむことです。親子のコミュニケーションが深まることで、お子さまはさらに安心感を得られます。
スキンシップを増やす
指しゃぶりは、お子さまが不安や寂しさを感じた時に、自分自身を慰めるための行動でもあります。そのため、保護者の方とのスキンシップを増やし、愛情を伝えることが癖の改善に非常に効果的です。
オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、人の心を落ち着かせ、安心感をもたらす作用があります。指しゃぶりで得ていた安心感を、スキンシップで満たしてあげましょう。
特に、環境の変化で不安を感じやすい時期は、いつも以上にスキンシップを心がけてください。お子さまが指しゃぶり以外の方法で安心できると学習すれば、自然と癖は減っていきます。
言葉で伝える
お子さまが3歳を過ぎ、言葉の理解が進んだら、なぜ指しゃぶりをやめた方が良いのかを話すことも有効です。伝える際には、自己肯定感を傷つけない工夫が大切です。
分かりやすい言葉を選び、「指が痛い痛いになっちゃうよ」「お口にバイキンが入っちゃうから心配だな」など、具体的な言葉で伝えます。叱らず、愛情を込めて「〇〇ちゃんのことが大切だから教えているんだよ」という姿勢で優しく話しかけましょう。
指しゃぶりをしなかった日には「今日は指しゃぶりしなかったね!お兄さん(お姉さん)だね!」と褒めてあげましょう。
歯科医院に相談する
歯科医院に相談しましょう。ご家庭での努力だけでは改善が難しい場合や、すでに歯並びへの影響が見られる場合は、小児歯科を専門とする歯科医師に相談してください。
歯科医院では、お子さまの心理的な背景も考慮しながら、ご家庭での効果的な関わり方について具体的なアドバイスを行います。また、指しゃぶりによって、歯並びや顎の成長にどのような影響が出ているのかを専門的に診断します。
集団生活が始まっても指しゃぶりが続いているなど、対応に限界を感じたら、それは専門家を頼るべきサインです。
指しゃぶりは歯並び以外にも
悪影響がある

虫歯や歯周病リスクが上がる
指しゃぶりの習慣は、お口の中を虫歯や歯周病になりやすい環境に変えてしまうことがあります。その主な原因は、「唾液の働きの低下」と「指に付着した細菌」の2つです。
まず、指しゃぶりで前歯が前に出たり、上下の歯が噛み合わなくなったりすると、無意識のうちに唇がぽかんと開いた状態になりがちです。お口が常に乾燥すると、お口の中の健康を守る「唾液」の働きが十分に発揮されなくなります。
唾液には、食べかすを洗い流したり、細菌の繁殖を抑えたりする自浄作用や、歯の再石灰化を促す作用など、さまざまな働きがあるためです。また、お子さまの指には、目には見えないたくさんの細菌が付着しています。
その指を長時間お口に入れることで細菌が直接運ばれ、虫歯や歯肉炎(歯周病の初期段階)のリスクを高めることにつながります。
口呼吸になりやすくなる
指しゃぶりは口呼吸の癖がつくきっかけになります。指をしゃぶっている状態に慣れると、無意識に口を開けて呼吸するようになることがあります。
さらに、指しゃぶりで出っ歯や開咬になると、物理的に唇を閉じることが難しくなり、口呼吸の癖が定着しやすくなります。口呼吸には、感染症にかかりやすくなる、顔つきや顎の成長への影響、睡眠の質の低下といったデメリットがあります。
鼻には空気を加湿・加温し、ウイルスや細菌をろ過する機能がありますが、口呼吸ではこの機能が使えないため、汚れた空気が直接喉に届き、風邪などのリスクが高まります。
また、口呼吸はいびきの原因となり、睡眠を妨げることがあります。お子さまの健やかな成長のためにも、正しい鼻呼吸の習慣を身につけることが大切です。
滑舌の悪化に繋がる
指しゃぶりは、言葉をはっきりと発音する「滑舌」にも深刻な影響を及ぼすことがあります。特に、指しゃぶりによって上下の前歯が噛み合わずに隙間ができてしまう「開咬」になると、発音に問題が生じやすくなります。
私たちは言葉を発する時、舌や唇を複雑に動かし、歯に当てたり接近させたりしながら様々な音を作り分けています。しかし、前歯に隙間があると、そこから空気が漏れてしまい、特定の音が正しく発音できなくなってしまうのです。
- サ行(さ、し、す、せ、そ)
- タ行(た、ち、つ、て、と)
発音の問題は、その後の学習面にも関わるため、注意深く見守る必要があります。
指しゃぶりが歯並びに悪影響を及ぼすのではないかと
心配な方は、堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」へ
ご相談ください

お子さまの指しゃぶりが歯並びに影響しないか、ご心配になるのは当然のことです。長引く指しゃぶりは、出っ歯(上顎前突)や開咬といった不正咬合の原因となります。
しかし、指しゃぶりは心の安定にも関わるため、ご家庭での対応に悩まれることも少なくありません。指しゃぶりをやめさせることは、お子さまの成長にとって重要な課題の一つと言えるでしょう。
堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」では、お子さまの歯並びや癖に関するご相談を承っております。専門家の視点で、お口の状態や発達段階に合わせた無理のない卒業プランを一緒に考えます。
ご家庭だけで抱え込まず、ぜひ一度お気軽にご相談ください。