子どもの出っ歯は早めの治療がおすすめ。原因や放置するリスクを解説

この記事を監修した人

C＆C美原デンタルクリニック院長
杉田彰久

院長の杉田は成人・小児矯正を含めた各種先進医療を幅広く診療しており、口腔内の全体を診る全顎的な治療が可能です。特にマウスピース矯正治療を得意とし、MeLoS認定アライナー教育担当講師でもあります。患者様の希望や不安を丁寧に伺い、幅広い治療計画から患者様に適した治療方法を一緒に考え、地域のかかりつけ歯科医を目指しています。

「うちの子、少し前歯が出ている？」その小さな気づき、見過ごしていませんか。実は出っ歯、指しゃぶりや口呼吸といったお子さまの癖が、大きく関係しているのです。出っ歯をそのままにしておくと、見た目の問題だけではなく、滑舌が悪くなったり、虫歯や歯周病になりやすくなるなど、健康面においても様々なリスクがあります。

この記事では、出っ歯の原因から放置するリスク、お子さまに合った治療法までを解説します。

子どもが出っ歯になる主な原因

指しゃぶりや口呼吸などの口腔習癖

口腔習癖とは、お子さまが無意識に行うお口周りの癖のことです。顎や歯がまだ柔らかい成長期の子どもにとって、歯並びを乱す原因となることがあります。指しゃぶりは、上の前歯を持続的に前へ押し出す力をかけてしまい、出っ歯の状態をつくりだします。3歳頃までの指しゃぶりは無理にやめさせる必要はありませんが、4歳、5歳を過ぎても続いている場合は注意が必要です。

口呼吸が習慣になると、唇が歯を押さえる力が弱まり、舌の位置が本来あるべき上顎から下がってしまいます。その結果、上顎の骨の正常な成長が妨げられ、歯並びが乱れやすくなるのです。

食べ物や飲み物を飲み込むとき、無意識に舌先で前歯の裏側を押してしまう癖も、出っ歯の大きな原因です。舌が歯を押す力は弱いものですが、毎日繰り返しかかることで、少しずつ前歯が前方に押し出されてしまうのです。

遺伝

出っ歯の原因には、ご両親から受け継いだ骨格的な特徴も関係します。顔つきが似るように、顎の形や大きさ、歯のサイズといった特徴がお子さまに似る可能性は考えられます。

具体的には、上顎が下顎に比べて大きいことや、下顎が小さい、または後ろに下がった位置にあるといった骨格の問題、顎の大きさに対して歯が大きすぎる、または並ぶスペースが足りず、前歯が前に押し出されてしまうといった歯と顎のバランスの問題が挙げられます。重要なのは、遺伝的な要因があったとしても、口腔習癖などの環境的な要因が加わらなければ、症状がでないことです。

また、子どもの成長期であれば、顎の成長を利用して骨格のバランスを整える治療が可能です。早期に専門家の診察を受けることで、成長段階に合わせた最適な治療計画を立てることができます。

子どもの出っ歯を
放置するとどうなる？

虫歯や歯周病になりやすくなる

出っ歯の状態は、虫歯や歯周病のリスクを高める大きな要因となります。

1. 歯磨きがしにくく、汚れがたまりやすくなります。上の前歯が出ていると、歯並びがデコボコになりがちで、前歯の裏側や歯が重なり合っている部分は歯ブラシの毛先が届きにくくなります。そのため、歯垢(プラーク)が残りやすく、歯垢がたまると虫歯菌が酸を作り出して歯を溶かし、虫歯の原因になります。
2. お口の中が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなります。出っ歯の場合、唇が閉じにくいため、口呼吸になりやすく、お口の中が常に空気にさらされると、唾液が蒸発して乾燥します。口呼吸によって唾液のこれらの働きが弱まると、細菌が繁殖しやすい環境が整い、虫歯や歯肉炎のリスクが上がります。

滑舌が悪くなる

出っ歯は、言葉をはっきりと発音する滑舌にも影響を与えることがあります。発音が不明瞭だと、相手に誤解を与えたり、コミュニケーションが円滑に進まなくなることも考えられます。

特にサ行、タ行、ラ行などの音が不明瞭になる傾向が見られます。これらの音は、舌先を上の前歯の裏側の付け根あたりに接触させたり近づけたりすることで発音されますが、出っ歯の状態だと、舌が正しい位置に届かない、息が漏れてしまうという問題が起こります。

また、出っ歯の程度が強いほど、この傾向は顕著になることが多いです。これにより、言葉が不明瞭になることがあります。そのため、出っ歯の矯正治療は、見た目の改善だけでなく、滑舌の改善にも繋がることが期待できます。

コンプレックスの原因になる

周りの目を強く意識し始める多感な時期のお子さまにとって、見た目の特徴は大きな悩みの種になることがあります。出っ歯が原因で口元の見た目をとても気にしてしまい、精神的な負担につながるケースは少なくありません。

見た目のコンプレックスは決して小さな問題ではなく、お子さまの自己肯定感を育む上で、できる限り早期の対応が望ましいと言えるでしょう。

食事がしづらくなる

私たちの歯には、それぞれに大切な役割分担があります。前歯の主な役割は、食べ物を「噛み切る」ことです。加えて、発音を助けるという重要な役割も担っています。

しかし、出っ歯によって上下の前歯がうまく噛み合わないと、この機能が十分に果たせなくなります。前歯が使えない分、食べ物を無理に引きちぎったり、奥歯だけで噛んだりすることが増えます。

奥歯に過度な負担がかかることで、歯の寿命を縮めてしまう可能性もあります。食べ物を十分に噛み砕けないまま飲み込んでしまうと、唾液による消化の第一段階が不十分になります。そして、胃腸にも負担がかかり、消化不良を引き起こしやすくなります。

前歯を怪我しやすくなる

前歯が出っ歯のお子さまは、そうでないお子さまに比べて、転倒や衝突の際に前歯を怪我するリスクが高いことがわかっています。しかし、前歯が前方に突出していると、唇で歯を覆うことができません。

例えば、次のような場面で怪我のリスクが高まります。

• 体育の授業や休み時間の鬼ごっこ
• サッカーやドッジボールなど、ボールが当たる可能性のあるスポーツ
• つまずきや転倒

前歯をぶつけると、歯が欠けたり、折れたりするだけでなく、歯の神経が死んでしまったりすることもあります。大切なお子さまの歯を事故から守るためにも、歯並びを整えておくことは重要なのです。

子どもの出っ歯を治療する方法

第1期治療

第1期治療は混合歯列期と呼ばれる6歳から12歳頃に行われる治療です。この時期は顎の骨がまだ柔らかく成長の途中にあるため、その力を利用して歯並びの土台を整えることを目的とします。具体的には顎の骨の大きさを適切に広げて、これから生えてくる永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保します。

第1期治療を適切な時期に行うことで永久歯を抜かずに済む可能性が高まります。第2期治療(本格矯正)が不要または期間が短くなることも期待できます。

床矯正(拡大装置)

床矯正は、取り外し可能なプレート型の装置で顎の骨を広げる治療法です。顎が小さく歯のスペースが足りないことで前歯が出っ歯になっている場合に用いられます。装置にはネジが埋め込まれており、指示に従い保護者が定期的に回します。

ネジを回すと装置が拡大し、顎の骨が広がります。この仕組みで、永久歯が並ぶスペースを作ります。日常生活への影響を比較的少なく抑えられます。

急速拡大装置

急速拡大装置は上顎の骨に固定し、短期間で歯列の幅を広げる装置です。上顎の幅が狭いことが出っ歯の主な原因である場合に、効果的な治療法となります。この装置も中央のネジを1〜2回回します。

床矯正と違うのは歯だけでなく、上顎の骨そのものを広げる点です。お子さまの上顎には固まっていない骨のつなぎ目があります。この装置は縫合部を広げることで、骨格レベルから上顎の幅を拡大させます。装置の周りを歯磨きする習慣が大切です。

ヘッドギア

ヘッドギアは、上顎過成長が原因の骨格性の出っ歯に用いられる装置です。お口の中の装置と、頭や首にかけるバンドを組み合わせて使用します。同時に、上の奥歯を後ろに動かすことで、上下の顎の骨の前後的なバランスを整える効果もあります。

治療効果を得るためには、1日に12時間以上の装着が必要となることが多く、お子さま本人の協力が不可欠です。骨格の問題に直接アプローチできる非常に有効な治療法ですが、お子さまの生活スタイルや性格を十分に考慮して、使用を検討する必要があります。

インビザライン・ファースト

インビザライン・ファーストは、子どもの成長期の顎骨や歯列に合わせて開発された、透明で目立ちにくいマウスピース型の矯正装置です。この治療法では、まず3Dスキャナーでお口の中を精密にデータ化し、コンピューター上で治療計画を立案します。歯列の幅を広げる機能や、顎の成長を適切な方向へ促す機能も備わっています。最新のデジタル技術を活用した治療法であり、お子さまの心身への負担を減らしながら、効果的な治療が期待できます。

第2期治療

第2期治療は、永久歯がすべて完全に生えそろった後に行う「本格的な矯正治療」です。第1期治療で整えた顎の骨の上で、歯一本一本の位置や傾き、細かな角度を調整していきます。最終的な目標は、見た目に美しい歯並びと、機能的に正しく安定した理想の噛み合わせを完成させることです。第2期治療で主に使用される装置には、「マウスピース矯正」と「ワイヤー矯正」の2種類があります。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、インビザラインに代表される、透明なマウスピース型の装置を交換していくことで歯を動かす治療法です。治療前に3Dスキャナーでお口の中の情報を取得し、コンピューター上で歯の動きをシミュレーションします。その治療計画に基づいて、治療完了までのマウスピースが作製されます。

食事や歯磨きの際に取り外せるので快適です。歯磨きがしやすく、虫歯のリスクを抑えられます。金属アレルギーの心配がないです。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットを接着し、ワイヤーを通して力をかけることで歯を動かす矯正治療法です。ワイヤー矯正には、歯を動かす力が強く、治療の確実性が高いというメリットがあります。

一方で、金属の装置が目立ちやすい、装置の周りに汚れがたまりやすく、歯磨きに工夫が必要というデメリットも存在します。しかし、最近では透明なブラケットや白いワイヤーを使用することで、目立ちにくさを改善する工夫もされています。

子どもの出っ歯の治療を検討している方は、
堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」へご相談ください

お子さまの出っ歯について、原因や健康面でのリスクについて解説しました。堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」では、お子さまの歯並びに関するお悩みやご相談をいつでも受け付けております。

当院が最も大切にしているのは、お子さま一人ひとりのお口の状態や顎の成長段階、そして生活習慣などを丁寧に診察することです。床矯正やインビザライン・ファースト(子ども向けのマウスピース矯正)をはじめ、幅広い選択肢の中から、お子さまの心身への負担が少なく、より良い結果につながる方法を一緒に考えていきましょう。