乳歯の歯並びでよくある相談5つ。矯正治療が必要なケースをご紹介します

この記事を監修した人

C＆C美原デンタルクリニック院長
杉田彰久

院長の杉田は成人・小児矯正を含めた各種先進医療を幅広く診療しており、口腔内の全体を診る全顎的な治療が可能です。特にマウスピース矯正治療を得意とし、MeLoS認定アライナー教育担当講師でもあります。患者様の希望や不安を丁寧に伺い、幅広い治療計画から患者様に適した治療方法を一緒に考え、地域のかかりつけ歯科医を目指しています。

お子さんの小さな口元に並ぶ可愛らしい乳歯を見て、「うちの子の歯並び、これで本当に大丈夫？」と心配になった経験はありませんか。

乳歯の歯並びは、単なる見た目の問題だけではありません。長期間放置すると、虫歯や発音の問題だけでなく、全身の健康状態にまで影響が及ぶこともあります。この記事では、よくある5つのご相談内容を元に、矯正治療が本当に必要なケースを専門家の視点で詳しくご紹介します。

乳歯の歯並びでよくあるご相談

歯が斜めに生えている

生え始めの乳歯が少し斜めを向いていると、心配になるかもしれません。しかし、多くの場合、これは成長過程の一時的な現象です。隣の歯が生えてきたり、お口周りの筋肉が発達したりするにつれて、自然と正しい位置に落ち着くことがほとんどです。

特に、乳歯と乳歯の間に隙間がある「すきっ歯(空隙歯列)」の状態は、むしろ理想的といえます。歯科医院での定期検診を通じて、顎の成長や歯の生え変わりを継続的にチェックしていくことが大切です。

歯並びがガタガタしている

歯が重なり合ったり、デコボコに生えたりする状態を「叢生」と呼びます。これは歯が並ぶ顎のスペースが主な原因です。顎のアーチが小さい、あるいは歯が大きいなど、歯と顎のバランスが取れていない状態です。

歯が重なり合う部分は歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れのたまり場になるためです。最初の永久歯である6歳臼歯が生え、前歯が生え変わり始める6歳ごろが矯正相談におすすめのタイミングです。

受け口になっている

下の歯が上の歯より前に出ているかみ合わせを「受け口」といい、専門的には「反対咬合」と呼ばれます。骨格性の受け口をそのままにしておくと、下の顎が過剰に成長し、顔つきにも影響が出ます。

また、「サ行」や「タ行」などが発音しにくくなったり、前歯で食べ物を噛み切りにくくなることも。特に上顎の成長は7〜9歳ごろにピークを迎えるため、4〜5歳といった早い段階でご相談いただくことで、最適な治療開始時期を逃しません。

出っ歯になっている

上の前歯が下の前歯より前に突き出ている状態を「出っ歯」といいます。遺伝的な要因もありますが、お子さんの場合は無意識の癖が原因のことも少なくありません。出っ歯は見た目の問題だけでなく、転んだ際に前歯を強くぶつけて折ったり、唇を傷つけたりするリスクが高まります。

また、唇が閉じにくいため口の中が乾燥し、唾液による自浄作用が低下してむし歯になりやすくなる問題も伴います。

奥歯で噛んだ時に上下の歯の間に隙間がある

奥歯で噛んでも、上下の前歯が噛み合わず隙間ができる状態を「開咬」といいます。前歯で食べ物を噛み切ることが難しく、麺類を上手にすすりきれない特徴が見られます。開咬を放置すると、咀嚼機能への影響や発音につながることがあります。

口が自然に閉じにくいため、口呼吸が癖になりやすく口内の乾燥や感染症リスクを高めます。原因となっている癖を改善するためのトレーニングや、お口周りの筋肉バランスを整える装置を使い治療を進めます。

乳歯の歯並びが悪い原因

遺伝

顔つきや背格好が親子で似るように、歯並びに関わる特徴も遺伝することがあります。具体的には、歯の大きさと顎の大きさのアンバランス、骨格的な特徴、歯の本数の異常が遺伝によって歯並びに影響を与えます。歯が並ぶ土台である「顎の骨の大きさ」と、そこに並ぶ「歯の大きさ」は、それぞれ遺伝の影響を受けます。上顎や下顎の大きさ、形、前後的な位置関係といった骨格の特徴も遺伝します。

口腔習癖

口腔習癖は、遺伝的要因に加え、無意識のお口周りの癖が歯並びを悪くする大きな原因となります。お子さんの顎の骨や歯は成長途中のため、日常的な癖によるわずかな力でも、長期間加わり続けると歯並びや骨格に大きな影響を及ぼします。代表的な口腔習癖には、指しゃぶり、口呼吸、舌の癖などがあります。これらの癖は、ご家庭で気づいてあげることが、歯並びを守るための第一歩です。

乳歯の歯並びが悪いことによる
悪影響

虫歯や歯周病のリスクが高まる

歯並びが重なり合うと、歯の間に複雑な隙間が生まれ、歯ブラシが届きにくい「汚れの聖域」となり、食べかすや歯垢が溜まりやすくなります。歯垢は食べかすではなく、虫歯菌の塊です。磨き残しが多いお口の中は、虫歯菌の住処となり、虫歯になるリスクが高まります。

さらに、歯茎の近くにも汚れが残りやすくなるため、歯肉が腫れる歯肉炎といった、歯周病の原因にもなります。

発音・滑舌に影響が出る

私たちは舌や唇、歯を連携させ言葉を話しています。歯並びに問題があると連携がうまくいかず特定の音が発音しにくくなることがあります。例えば歯並びの状態によってサ行やタ行などの発音に影響が出やすくなります。

発音が不明瞭だとコミュニケーションで何度も聞き返されたり言いたいことが伝わらなかったりするかもしれません。言葉をたくさん吸収し表現する力が伸びる大切な時期に、発音のしにくさが会話への苦手意識につながらないよう見守ることが大切です。

咀嚼しづらくなる

咀嚼は栄養を効率よく吸収するだけでなく、私たちの健康を支えるための非常に重要な働きを担っています。しかし、歯並びが悪いと上下の歯がきちんと噛み合わず、この咀嚼機能が十分に発揮されません。

咀嚼が不十分だと、大きいままの食べ物が胃腸に送られるため、消化不良を起こしやすくなります。お子さんの健やかな体と脳の発育のために、しっかり噛めるお口の環境を整えてあげることが重要です。

乳歯の歯並びを
悪化させないために

口腔習癖を改善する

口腔習癖とは、お口周りに関する無意識の癖のことです。お子さんの顎の骨や歯は、弱い力でも変形してしまいます。そのため、これらの癖は歯並びが乱れる原因となります。それらの習癖を改善することにより歯並びの悪化を防ぐことができます。

癖を無理にやめさせるのは、お子さんの精神的な負担になることもあります。なぜ良くないのかを優しく伝え、歯科医院で専門的なトレーニングを受けるのも一つの方法です。

顎や口周りのトレーニングを取り入れる

きれいな歯並びは顎の大きさと筋肉のバランスで決まります。柔らかい食べ物が多い食生活では、噛む力が弱まり顎が発達しない傾向にあります。

癖を無理にやめさせるのは、お子さんの精神的な負担になることもあります。なぜ良くないのかを優しく伝え、歯科医院で専門的なトレーニングを受けるのも一つの方法です。

ご家庭でできるトレーニング

食事の工夫で「噛む力」を育てる

1. 噛むことを意識づける「しっかり30回噛んでみよう」など声をかけ、噛む習慣をつけましょう。
2. 歯ごたえのある食材を選ぶ根菜やきのこ、小魚など硬さのある食材を食事に取り入れましょう。

予防矯正を始める

予防矯正とは、歯並びが悪くなってから治すのではなく原因にアプローチする治療です。歯並びが悪くなるのを未然に防ぎ、お子さんの顎の成長をサポートします。乳歯が生えそろう3歳ごろから永久歯が生える前のお子さんが対象です。

治療では主に取り外しのできる柔らかいマウスピース型の装置を使います。日中数時間と夜眠る時に装着し、お口周りの筋肉のバランスを整えていきます。

乳歯の歯並びを矯正する方法

マウスピース矯正

透明で目立ちにくいマウスピース型の矯正方法があります。お子さまの歯型に合わせて作製され、治療の段階に合わせて交換しながら歯を動かしていきます。透明なため、装着していても周りの人に気づかれにくいのが利点です。

食事や歯磨きの際は取り外せるため、普段通りに食事を楽しめます。装置がお口周りの筋肉のバランスを整え、顎が本来持つ成長力を引き出し、歯が並ぶスペースを広げながら歯並びを整える効果が期待できます。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットという小さな装置を接着し、そこにワイヤーを通して力を加え、歯を動かしていく矯正方法です。確実性が高く、多くの症例に対応できるのが特徴です。歯のガタガタが強い場合や、骨格的な問題が複雑に絡む歯並びなど、ほとんどの不正咬合に対応できます。

一方で、装置が固定式のため、歯磨きが難しくなるという側面もあります。お口のケアを徹底することが重要です。

拡大装置

拡大装置は、顎の骨が柔らかい成長期のお子さんに使用し、歯列のアーチを横に広げることが目的です。永久歯がきれいに並ぶには十分なスペースが不可欠で、この装置で顎を広げることで、スペースが確保され、将来、永久歯がガタガタになるのを防ぎます。また、歯を抜かずに矯正治療ができる可能性を高めます。

ヘッドギア

ヘッドギアは、主に出っ歯の治療に用いられる装置で、特に上の顎が大きく成長しすぎている骨格的な問題に効果的です。お口の中に装着した装置と、頭や首にかけるバンドを連結して使います。

後方へ持続的に力をかけることで、上顎の過剰な前方への成長を抑えます。主に帰宅後や寝ている間に使用し、1日に10〜12時間程度の装着が必要です。骨格性の出っ歯に対しては、今なお非常に有効な治療法の一つです。

MFT

MFTとは「口腔筋機能療法」の略称で、お口の周りの筋肉を正しく使えるようにするためのトレーニングです。歯並びが悪くなる根本的な原因には、指しゃぶりや舌で前歯を押す癖、口呼吸などがあり、これらの癖は、お口周りの筋肉の間違った使い方によって引き起こされます。

MFTは、矯正装置による治療効果を高め、治療後の後戻りを防ぐために不可欠です。歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、ご家庭で毎日コツコツと続けることが大切です。

リンガルアーチ

リンガルアーチは、歯の裏側に沿わせて装着する針金製の固定式装置で、第一大臼歯に固定したバンドに取り付けます。リンガルアーチには、歯並びの現状維持や、他の歯を動かすための補助をする役割があります。

特に、歯列の幅を保つために使用されることが多いです。これは、乳歯が抜けた後のスペースを確保し、後続の永久歯が正しい位置に生えるように誘導するためです。装置は歯に固定されているため、自分で取り外すことはできません。

バイオネータ

バイオネータは、お子さんの成長する力を利用して顎のバランスを整える装置です。機能的矯正装置の一つで、マウスピースのような形をしています。この装置をお口に入れると、下顎を少し前に出した位置で噛むように誘導されます。この状態を維持することで、下顎の骨の成長が促され、後ろに下がっていた下顎を前方へ成長させます。

主に、下顎が上顎に比べて小さいために起こる出っ歯や、噛み合わせが深すぎる過蓋咬合の治療に用いられます。

乳歯の歯並びに不安がある方は、
堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」へご相談ください

乳歯の歯並びに不安がある方は、堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」へご相談ください。乳歯の歯並びは、永久歯が正しく並ぶための土台であり、顎の成長に大きく関わります。将来の歯並びだけでなく、発音や咀嚼にも影響を与える可能性があるため、早期のケアが大切です。

堺市美原区の「C&C美原デンタルクリニック」では、お子さま一人ひとりの成長段階を丁寧に診察します。お口の状態や骨格の発育を評価し、その子に合った治療開始の適切な時期をご提案します。受け口や歯のガタガタなど、気になることがあれば、些細なことでもお聞かせください。お子さまの大切な未来のために、ぜひ一度お気軽にご相談ください。